『エットレ・ソットサス展−魔法がはじまるとき、デザインは生まれる』

アーティゾン美術館で『エットレ・ソットサス-魔法がはじまるとき、デザインは生まれる』を見た。エットレ・ソットサス1、学生の頃の教授がオリヴェッティの赤いタイプライター《ヴァレンタイン》を見せてもらったり、ポストモダンの旗手として知ったりと、もちろん歴史のピースとしては認識していたものの、はっきりを作品を見るのは初めてだったかもしれない。
ソットサスについてはメンフィス2の文脈はもちろん、それ以外には、日本で言うところの新建材3の隆盛に見られるような新しい工業的・化学的なマテリアルの勃興が表現になんらかしらの規定を与えていたのではないか、とうっすら思っていた。確かに《カールトン》をはじめとするカラフルな作品は、確かに樹脂ラミネートされたプリント合板によって構成されている。けれどもトーテムの形をしたオブジェクトの《オダリスク》などはセラミックと釉薬によって形が作られていて、その表現に驚いた。

トーテムに近寄ってみると、確かにセラミックと釉薬でできたオブジェクトであった。トーテムの作品群は1960年代中頃のもので、《カールトン》は1981年。確かにこの間の15年の時代の変化の速度は凄まじかったことは窺えて、樹脂ラミネートの表現に至ることはよくわかるのだけど、けれどもそのアイデアの前段階からもすでにカラフルな領域に踏み入れていたことに驚いた。

個人的には、家具やトーテム、ドローイング等も良かったのだけど、展示最後にあった花瓶のシリーズが内照のデスクに乗っているディスプレイが良かった。ガラス瓶が下から照らされて浮遊感が生まれていた。デザイン史に燦然と輝いて残るマスターピースをきちんと目にすることができて良かった。

1エットレ・ソットサス(Ettore Sottsass):イタリアの建築家・デザイナー(1917–2007)。オリベッティで《Valentine》タイプライターなどを手掛けた後、1981年にデザイン集団「メンフィス」を結成。近代デザインが重視した機能主義や合理主義に対し、象徴性や感情、歴史的・文化的引用を積極的に取り入れ、ポストモダン・デザインを代表する人物として知られる。
2メンフィス(Memphis):1981年にエットレ・ソットサスを中心としてミラノで結成されたデザイン集団。鮮やかな色彩、幾何学的形態、ラミネート材などを用い、近代デザインの「機能=美」という価値観を批判的に更新した。家具・照明・建築・グラフィックを横断し、1980年代のポストモダン・デザインを象徴するムーブメントとして大きな影響を与えた。
3新建材:高度経済成長期の住宅供給の拡大と建築の工業化を背景に、プリント合板やビニールクロス、石膏ボード、アルミサッシなどの工業製品が住宅に広く普及した現象を指す。施工の合理化や大量生産を支える一方、従来の木質材料を模した意匠が一般化し、戦後日本の住空間の景観形成に大きな影響を及ぼした。