山田 登世子『贅沢の条件』について

贅沢の条件/山田 登世子|岩波新書 - 岩波書店iwanami.co.jp ↗
贅沢とは何かを紐解く書籍。かつて贅沢とは、城を築き、装飾を誇り、労働から離れて生きることだった。ヴェブレンの言う「有閑」の価値観に象徴されるように、浪費こそが名誉であり、勤労は卑しいとされた。しかし近代を経て、ブランメルのダンディズムが示したように、贅沢は「わかる人にだけわかる」内的洗練へと移り変わる。黒いスーツに代表される静かなスタイルは、装飾から意味の世界への転換を告げた。
やがてシャネルが登場し、女性が装飾の主体となり、贅沢は精神的な体験へと深化していく。手仕事のゆらぎ、時間の不可逆性、そして来歴の重み——それら金では買えない一回性の中に、真のラグジュアリティが宿る。月を見る静かな贅沢や、愛することの没入にも似た豊かさは、もはや物質ではなく心のあり方そのものを映している。