『反撃する映画と都市「ショッピングモールの父」と呼ばれたくなかった男 ビクター・グルーエン』

nihonbashi-pub.co.jp「反撃する映画と都市「ショッピングモールの父」と呼ばれたくなかった男 ビクター・グルーエン」を発売 | 【日本橋出版】東京の出版社

まさか2024年になってビクター・グルーエンに関する新しい著作が読めるとは思っておらず、とてもおもしろかった。通俗的に理解されているグルーエン評に対して、20世紀を表象する映画を足がかりにしながら、その人生を辿っていくもの。ウィーンからアメリカ、そして晩年のザルツブルグへとたどりながら描く評伝。劇場美術出身の彼にとって、都市は“人間のための舞台”であり、モールは「市民の広場」として実現されるべきものだった。しかし、その理想は資本主義の消費装置として変質していく。アール・デコの影響、ノースランドやサウスデールの実験、自己批判を経た晩年の思想までを通して、本書は「歩行者の都市を奪還せよ」というメッセージを浮かび上がらせる。個人的には、彼が「共用部」に対して並々ならぬこだわりを持っていたこと(彫刻や植え込み、サインについて厳しく統制していた)や、今で言うミクスドユースを重要視してそれを実現しようとしていた点と商業主義的であることとある種の公共性をもつことについての綱引きがあって、それは古くて新しい商業空間を貫く問題設定なのだと感じた。