加藤秀俊, 真鍋博, 朝日新聞社 編『2001年の日本』

『2001年の日本』は、1969年の時点から、約30年後の日本社会を予想した本である。地理、交通、産業、都市、医療、教育、メディアなどの主題について、各分野の専門家による予測と、真鍋博のイラストレーションによって未来像が描かれている。
未来予測の本を後から読むとき、最初に気になるのは、その予測が当たったかどうかである。実現した技術もあれば、姿を変えて現れたものもあり、ほとんど実現しなかった構想もある。しかし、本書の面白さは、予測の正確さだけにあるのではない。描かれた未来には、それを構想した時代の価値観が現れる。何が問題とされ、何が成長すると考えられ、どのような生活が望ましいとされたのか。未来について語られた言葉や図像は、1969年の日本社会が抱いていた期待や不安を記録している。
未来予測は、現在から完全に自由になることができない。私たちは、すでに存在する技術や制度、生活習慣を組み替え、その延長として未来を描く。そのため、予測された未来を読むことは、それを描いた時代の現在を逆向きに読み解くことでもある。同時に、真鍋博のイラストレーションは、予測を具体的な風景として立ち上げる。文章だけでは抽象的だった技術や制度が、乗り物、建築、都市、人物の姿となって現れる。そこで描かれる未来は、情報の集積であると同時に、ひとつの世界観である。
未来像は、当たった瞬間に価値を持つのではない。いまと異なる世界を想像し、それを他者と共有できる形にした時点で、社会に対して働きかけ始める。本書は未来予測の記録であると同時に、未来を描くという行為そのものについて考えるための資料でもある。