ナターシャ・ダウ・シュール『デザインされたギャンブル依存症』 について

本書は、カジノ産業やデジタルスロットマシンがいかに「依存」を設計し、人々の時間と金銭を吸い取っていくのかを描き出した社会学的ルポである。
著者はラスベガスでの現地調査を通じて、機械のデザインや報酬システムが人間の認知や感情をいかに操作するかを明らかにしている。単なるギャンブル批判にとどまらず、「デザインが人の行動を方向づける」という点を鋭く照射し、依存症を個人の弱さではなく、社会的・制度的に生み出された現象として捉え直す視点を提示している。
とりわけ、カジノの内部空間に対する分析は非常に興味深い。利用者の注意を眼前のスロットマシンへ集中させるため、空間全体はむしろ洞窟のように錯綜した構成であるほど効果的であり、その結果として人々は自然とスロットマシンへ引き寄せられていく。このような具体的な空間デザインの手法に対する考察は、本書のなかでも特に一読に値する部分だなと。
本書は、デザインや空間が人間の体験や行動に与える影響を考える読者にとって示唆に富んでいる。