真木悠介『時間の比較社会学』

時間の比較社会学/真木 悠介|岩波現代文庫 - 岩波書店iwanami.co.jp ↗

時間は、誰にとっても同じ速度で流れる、自然で普遍的なもののように思える。しかし、私たちが時間をどのように区切り、過去や未来をどのように捉えるかは、社会や文化のあり方と深く結びついている。

真木悠介の『時間の比較社会学』は、原始共同体、古代日本、ヘレニズムとヘブライズム、近代社会などを比較しながら、社会の構造によって異なる時間意識が生み出される過程を描いた本である。自然と人間、共同体と都市、市場と貨幣といった関係を通して、近代的な時間がどのように形成されたのかが検討される。季節や儀礼の反復を中心とする時間において、世界は循環しながら持続していく。一方、近代社会では、時間は過去から未来へ向かって直線的に進むものとなる。未来には進歩や成長が置かれ、現在はその途上にある段階として理解される。

この直線的な時間は、新しい可能性を開く一方で、人間を時間に追い立てる。時計によって均質に区切られた時間は、交換や計画、労働を可能にするが、同時に、時間を自分の外側にある客観的な尺度へと変えていく。本書の後半に置かれた「時間への疎外」と「時間の物象化」という章題は、近代人と時間との関係を端的に示している。

現在、私たちは未来を目指して進んでいるようでありながら、その未来を具体的に思い描きにくくなっている。未来が現在の延長としてしか現れないのであれば、それは未来像の問題であると同時に、私たちが生きている時間の形式の問題でもある。未来を考え直すには、何が起こるかを予測するだけでは足りない。そもそも未来へ向かって進むという時間感覚が、どのような社会によって作られたのかを問い直す必要がある。本書は、時間そのものを歴史的・社会的なものとして捉え返すための契機になる。